新潟地方裁判所 昭和40年(わ)271号 決定 1966年4月18日
被告人 M・K(昭二三・一・一九生)
H・G(昭二二・五・五生)
G・N(昭二二・八・一四生)
W・K(昭二一・一〇・二八生)
M・S(昭二二・二・二生)
主文
本件を新潟家庭裁判所に移送する。
理由
(当裁判所の認定した事実)
第一、被告人H・G、M・KおよびA、Bは、昭和三九年五月下旬ごろの夕方、被告人H・Gが、同人とかねて付合いのあった○田○子(当時一七歳)を強いて姦淫しようとして、甘言を弄し同女を自己の運転するバイクに乗せ友人の新潟県北蒲原郡聖籠村大字○○×××番地前記A方に連れ込み、まず被告人H・Gおよび同所に居合わせた右Aの両名において同女を強姦すべく共謀し、さらにその後同所に赴いて来た被告人M・Kおよび前記Bとも意思相通じ、ここに四名共謀のうえ、同日午後八時ごろ、右A方三畳間において、被告人H・Gが、同女に対しやにわに同女をその場に押し倒したり、「大声をあげると聞えるぞ。」など云いながら抵抗する同女の手足を押えつけるなどの暴行を加えてその反抗を抑圧し、被告人H・G、前記A、被告人M・K前記Bの順にそれぞれ同女を強いて姦淫した。
第二、被告人M・K男、同W・KおよびA、Cは、同年六月中旬ごろの夕方、まず被告人M・K、同W・Kおよび右Aが、肩書被告人M・S方附近路上で、自動車に前記○田○子を乗せて通りかかった被告人H・Gより同女と肉体関係をしたと聞くに及んで、これを奇貨として、同女を強姦すべく共謀し、甘言を弄し、同女を前記聖籠村大字○○△△七番地○宝寺こと○田○法方裏山(通称○○○○山)に連れ込み、この事を知りかけつけて来た○○○○とも意思相通じ、ここに四名共謀のうえ、同日午後八時ごろ、右あんじよ山草むら内において、被告人M・Kが不安におののく同女に対し、「大勢来るぞ。」「皆を呼ぶぞ。」などと脅迫したり、同女をいきなりその場に押し倒すなどの暴行を加えたりしてその反抗を抑圧し、被告人M・K、前記A、被告人W・K前記Cの順にそれぞれ同女を強いて姦淫した。
第三、被告人M・K、同M・S、同W・KおよびCは、同年九月○日ごろの夜、肩書被告人M・K方作業場二階六畳の間でDが○部○子(当時一八歳)と同衾しているところに相ついで来合わせ、これを見るに及んで劣情を催し、同女を強姦すべく順次意思を相通じ、ここに四名共謀のうえ、同所において同女があらわもない姿を見られ羞恥の余り抗拒不能の状態になっているのに乗じ或いは、被告人M・Kが、同女に対し、「んな(お前)みたいな奴はさせないと殺してやる。」などと云いながら平手でその顔面を殴打するなどの暴行を加えてその反抗を抑圧し、翌日早朝に至るまでこもごも一回ないし二回強いて同女を姦淫した。
第四、被告人M・S夫およびD、Cは、同年一〇月中旬ごろの夕方、新発田市内道路上で被告人H・Gの自動車に乗っていた○森恵○子(当時一七歳)を見るに及び、共謀のうえ、甘言を弄し、同女を同所に来合わせた○田○博の運転する自動車に乗せ前記聖籠村大字○○○(通称○山)内の桜桃畠の中に連れ込み、同日午後八時ごろ、同所において、右○田が同女と肉体関係をしたのを奇貸として、被告人M・Sが抵抗する同女に対し、その場に押し倒すなどの暴行を加えてその反抗を抑圧し、被告人M・S、続いて前記DおよびCが順次それぞれ強いて同女を姦淫した
第五、被告人M・K、同M・SおよびD、C、Aは、昭和四〇年一月下旬ごろの夕方、前記肩書被告人M・K方で遊んでいた際、被告人M・Kが「男と遊んでいる面白い女がいるからその女を連れて来てみんなでやろう。」と云い出したところから、共謀のうえ、同被告人の運転する自動車で前記○森恵○子を右同被告人方作業場二階六畳間に無理に連れ込み、同日午後七時ごろ、同所において、同被告人が同女に対し、「おい、させれや、前に松林でみんなにさせて何言っているんだ。これをみんなに教えるぞ。」と脅迫したり、同女をその場に押し倒してその体を押えつけるなどの暴行を加えたりしてその反抗を抑圧し、同被告人、前記C、A、D、被告人M・Sの順にそれぞれ同女を強いて姦淫した
第六、被告人M・KおよびD、C、A、Eは、同年四月○○日夜、まず右D、C、A、Eが成○弘が連れていた○井キ○子(当時一六歳)を強姦すべく共謀し、右成○の許より同人と寝ていた右キ○子を前記聖籠村大字○○△△△番地右D方離れの六畳間に連れ込み、その後同所に赴いて来た被告人M・Kとも意思相通じ、ここに五名共謀のうえ、翌××日午前零時三〇分ごろ、同所において、右D、C、Aが共同して同女に対し、その手を引張ったり、その体をつかんだりしてその場に押し倒し、被告人M・Kおよび前記Eもその手足を押さえるなどの暴行を加えてその反抗を抑圧し、右D、C、Aが順次その上に乗りかかって強いて同女を姦淫しようとしたが、同女に抵抗されたため、その目的を遂げなかった。
第七、被告人H・G、同G・N、同M・K、同W・Kは、被告人H・Gが、かねてより、劣情を抱いていた○木○子(当時一八歳)を強姦しようと云い出したところから、共謀のうえ、同年九月○日夕方、被告人H・Gが、同女の勤め先よりの帰途を待ち受け、甘言を弄し、同女を被告人G・Nの運転する自動車に乗せて、かねての手筈のとおり前記聖籠村大字○○字○○○××××番地○塔院排水機小屋に連れ込み、同日午後一〇時ごろ、同所において被告人H・Gが同女に対し、「お前他の人にやらせて俺達にどうしてやらせないんだ。」などといいながら、被告人G・Nとともに同女をその場に押し倒し、その手足を押えつけるなどの暴行を加えてその反抗を抑圧し、被告人H・G、同M・K、同W・K、同G・Nの順にそれぞれ強いて同女を姦淫したが、その際右暴行により同女に対し、全治約一〇日間を要する顕部右上腕内側皮下出血の傷害を負わせた
ものである。
なお、右事実は、本件記録添付の各証拠により明らかであり、法律に照らすと、判示所為のうち、被告人H・Gの第一、被告人M・Kの第一ないし第三、および第五、被告人W・Kの第二および第三、被告人M・Sの第三ないし第五の各所為はいずれも刑法第一七七条前段、第六〇条、被告人M・Kの判示第六の所為は同法第一七九条、第一七七条前段、第六〇条に、被告人H・G、同M・K、同W・K、同G・Nの判示第七の所為はいずれも同法第一八一条、第一七七条前段、第六〇条にそれぞれ該当する。
(移送の理由)
被告人らの本件各犯行は、いずれも強姦事犯としてその罪質は重く、その態様もいわゆる輪姦であってこの種犯罪に対する一般予防的見地よりもその犯情は決して軽視できないものがある。しかしながら、被告人らはいずれも満一八歳から一九歳の少年であって、本件各犯行は、性道徳に対して低い認識を持つ地域社会において、少年にあり勝ちな意志の自立性と抑制の希薄さなど精神面における脆弱性が、不良交友集団の中での異常な雰囲気に誘発された結果惹起されたものであって、本件各被害者も判示認定からも窺い知ることができるようにその多くは必しもその素行も良好とはいえず、虞犯性も窺える女子であり、本件は法律的には強姦事犯として評価され得るとしてもその実態はむしろ不純異性交遊に近いものというべく、被告人らの反社会性も後記のとおり程度の差こそあれ矯正教育によって是正できない程固定化するには至っていないこと、そのほか、被告人らにはこれまで保護歴もなく、相共犯者はいずれも家庭裁判所より保護処分ないし不処分決定を受けていること、(A、C、Dにつき中等少年院送致、Eにつき保護観察、Bにつき不処分)をも併わせ考えると、今ここに被告人らを直ちに刑事処分に処するよりもむしろ家庭裁判所で保護処分に付するのが相当であり、なお、被告人M・Kについては、本件において保釈後再び同種事犯に及んだものであって、本件犯行も六件の多きにのぼりその熊様においても主導的役割を果しているものが多くその非行性も他の被告人らよりやや進んでおり、その家庭の保護能力もさして期待することができないこと、被告人H・G、同W・K、同M・Sについては、本件犯行の回数は二ないし三件であるが、前記本件事犯の特殊性、加担の程度、他の共犯者の犯行との関連等より考えると必しもその犯行の回数のみによって被告人M・Kより犯情軽きものとは云い難く、これまでの生活熊度、家庭状況よりするも予後に一抹の不安が残ること、もっとも本件において保釈された後は、家庭での保護監督の強化と被告人らの反省もあって正業に就くなどして比較的落着きのある生活をしていること、被告人G・Nについてはその犯行の回数、熊様よりするも他の被告人と比べ非行性もさほど進んでいないほか右同様本件保釈後は比較的堅実な生活を送っていることなどの具体的情状に照らし、被告人らに対しては、施設に収容し或いは在宅保護のもとに専門家の適切な指導を与え、被告人らを健全な社会人に育成せしめるのが相当である。よって、少年法第五五条により、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 石橋浩二 裁判官 礒辺衛 裁判官 松村利教)
参考
受移送家裁(新潟家裁)決定
少年M・K(昭四一(少)七七九号 昭四一・五・六決定特別少年院送致)
少年H・G(昭四一(少)七八〇号 昭四一・一二・五決定不処分)
少年G・N(昭四一(少)七八一号 昭四一・六・一五決定保護観察)
少年W・K(昭四一(少)七八二号 昭四一・一二・五決定検察官送致(法一九条二項))
少年M・S(昭四一(少)七八三号 昭四一・一二・五決定不処分)